2008年05月03日

西国へ

もはや年度も替わって5月。気が付けばゴールデンウィークという不定期更新爆進中の古写真ブログ、担当の三井です。
それにしても、正直、今年はすごい。ほとんど僕に責任があるのですが、それにしてもすごい忙しさです。。。
と、いきなり、個人的な愚痴から始めてしまっていますが、どこでキーを叩いているかというと、大阪は中之島の国立国際美術館(実は、これを書いていたのは4月26日なのです。アップにタイムラグがあってすみませんm(_ _)m)。
すごく大きくて理想的な構造の美術館です。なぜ理想的かというと。。。まず広い。
そして、地上にそびえ立っていくのではなく、地下に広がっている。
地上階は1階のみで、これはエントランスロビーだけ。地下一階はレストランやミュージアム・ショップ、授乳室やキッズルームまで完備。展示室は地下2階(おもに常設展示室)と地下3階(おもに企画展示室)。当然ですが、地上が高くない分、地震にはメチャクチャ強いわけです。その上、展示フロアが4000㎡を越えている!

すごすぎます。

床も厚くて、しっかりしているし。天井も高いし。

まぁ、当館のように写真と映像に特化した美術館ではなく、近現代を中心としているとはいえ、あくまで総合的な美術館だから、石彫だって視野に入れて作っています。だから、天井が高いのも当然といえば当然ですね。。。東京都現代美術館だって、ものすごく広いですものね。って、ちょっと自虐気味なのにはわけがあります。理由はのちほど。

さて、そんな大阪の美術館になぜいるのかというと、こちらの地下3階で催される「液晶絵画 Still/Motion」展の準備。というか、主催館である国立国際美術館が4月29日からオープンで、その設営/展示の視察。なぜかというと、8月にはこの展覧会が当館へ巡回してくるのです。すでに三重県立美術館での展覧会を終えて、国立国際美が二館目、当館が三館目というわけです。当館での主担当は美人学芸員藤村さん(既婚)。僕は副担当です。
なんだか、視察なんていう言葉を使うと、「堅い言葉使ってごまかしているけど、実際は遊んでいるんじゃないの?」という声が聞こえてきそうです。
でもね、本当、大事なんですよ、視察って。見ないとわからないことが沢山あるんです。
考えもみてください。
国立国際美の展示室は約4000㎡、これに対して、写美は3つ全部の展示室を合計しても約1500㎡(各フロア約500㎡)です。全館の展示室で、こちらのワンフロア分にも満たないわけです。そのまさにワンフロア(約2000㎡)を使って行われる「液晶絵画 Still/Motion」展を当館の地下一階(約500㎡)と二階(約500㎡)の二つの展示室で開催しようというのですから、実質的には展示スペースが半分になるのです(これがちょっと自虐的だった理由です。。。笑)。普通だったら、展示作品を減らすとか、コンテンツをシュリンクさせる方向で考えます。
ところが、写美の辞書にシュリンクという文字はありません。(はい、言い切りました。がんばります!)全部見せよう!作品を減らさないで行こう!そして、いい空間を作ろう!なんて、僕も含めて普通に考えてしまうわけです。
これを実現するためには、百聞は一見にしかず。


設営風景@国際美術館


まず、現場を見る。
どこをやり繰りできるか。図面上は空スペースに見えても、絶対に削れないところはどこか。電設で注意しなくてはならないのはどのあたりか。。。などなど
出品されている作品の意図が明瞭に伝わるように、そしてもちろん、できる限りクールでかっこいい展示室に仕上げるためには、どうしたらいいか。何しろ、倍のスペースに展示されている作品群です。普通に考えたら、見栄えどころか展示室に入りきりもしない。
それを、できるだけクールに、出品してくださっている作家の作品を最敬礼で尊重し、展示構成を考える。
結構大変だけれど、ものすごく楽しい。大好きな作業です。
そんなわけで、このちょっとした難題に取り組むため、美人学芸員藤村(既婚)といっしょに西国を訪れたという次第です。

大阪国際美術館では、4月28日から好評開催中!
(http://www.nmao.go.jp/)
ぜひご覧ください。

写真美術館での展覧会は8月23日から。
もちろん、こちらも乞うご期待。

さてさて、恒例の美味しいもの情報。
今日はもちろん大阪編。
中之島にある大阪国際美術館の横には、デザイナー北川氏率いるgraphのカフェがあるのです。ここでお昼ご飯をいただいたので、そのご報告。

ハンバーガー。
うまいです。
そして、さすがにおしゃれな感じです。
そういえば、以前ご紹介したアボガドバーガーのお店が最近やっていないような。。。今度しっかり確認してご報告します。

さて、ゴールデンウィーク。
僕は毎日出勤です。
がんばるぞ!

紫禁城写真展も、もちろんシュルレアリズム展もジャコメッリ展も好評開催中です。
みなさま是非是非、当館へお運びください。

2008年02月17日

カメラの調査 ~ニッパー君のお話~

ご無沙汰しております。
気づけば2月の半ばになってしまいました。
不定期更新にもほどがある古写真ブログ、担当の三井です。
今年は、さまざまに怒濤のはじまりで、本当にいっぱいいっぱいの毎日です。
どうか、ご容赦を。
<(_ _)>

そんな中、サブで担当しております「紫禁城写真展」(http://www.syabi.com/details/sikin.html)の関係で、横浜市所蔵のカメラコレクション調査のため、横浜市民ギャラリーあざみ野へ行ってまいりましたので、ご報告をしたいと思います。
今回は、調査の時のちょっと興奮気味の気持ちを、みなさまにもぜひ共有していただくため、画像を大きめにしてみました。

四人の妖精興味津々に群がっているパッケージデザイン。このlittle Nipper No.2は1900年の製品。まず何よりも、100年以上前に作られたカメラの紙の箱が残っていること自体に感激!なのです。

そして、これが本体。

調査の記録写真なので、背景が美しく撮れていない点、どうかご容赦ください。
それにしても、かわいいカメラだと思いませんか。
これは児童用教育カメラとして作られたもので、日本でもこのニッパー君を模して「チェリー手提(てさげ)暗箱」というのが作られます。(明治36年9月発売。)


今でもしっかり見えるファインダー。


今回の展示では、小川一真による最高に美しいプリントと同時に、こんなかわいいカメラたちも、みなさまをお待ちしています。3月29日(土)からはじまりますので、乞御期待!


さて、恒例のおいしいものシリーズ。
2008年最初を飾る第一号は、カツ丼です。
当館のすぐ近くにある、お蕎麦屋さんのカツ丼です。

どうですか。
ちなみに、奥に見えるのが並盛。
僕が食べているのが大盛。

ものすごいボリュームです。
パワー出ますよ。
あ、おてもとが逆なのは、僕が左利きということで、ご容赦ください。


それにしても、紫禁城の展覧会もあと一ヶ月!と秒読みです。
そして、今週の水曜日(21日)には、土田ヒロミのニッポン、新進作家展がフィナーレを迎えます。
お見逃しなく!

2007年12月28日

お年賀

本日は、当館の仕事納め。
春には当館で、《夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史Ⅰ.関東編》が開催され、5月に閉幕。6月末には群馬県立館林美術館へ巡回、9月に閉幕。その間、鶏卵紙ワークショップを都合4回。11月には横浜開港資料館で講演、長崎で古写真カンファレンス。そして、12月はたばこと塩の博物館で講演、横浜市民ギャラリーあざみ野で鶏卵紙ワークショップ。
なんだか、本当に今年も古写な一年でした。
そして、来年もガッツリ古写真な一年にできるようがんばります!

こうしてご覧いただいている皆様のおかげで、この古写真ブログも、年を越えることができます。

本年中は、本当にありがとうございました。
そして、来年もまた、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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皆様の健康とご多幸をお祈りしつつ、お年賀を添えて仕事納めとさせて戴きます。
ステキな新年とともに、皆様とお会いできることを楽しみにしております!

2007年12月25日

しゃび雅楽

ほんのちょっとだけ、いいテンポ更新の古写真ブログ。
担当の三井です。

今年もマッハで過ぎて行き、気がつけば今日はクリスマス。
皆様、きっと素敵なイブを過ごされたことでしょう。
そこで、素敵ついでにというのもなんですが、鬼に笑われるのにもめげず、来年のお話しをしようと思います。
平成20年写美のお正月は、イベント目白押しです。
なかでも今日ご紹介するのは、「しゃび雅楽」。
新年1月2日、3日の二日間、それぞれ13:00~と15:00~の合計4ステージが行われます。場所は2階ロビー。
今日はそのリハーサルというか、音チェックが行われたので、その模様をご報告。

篳篥を演奏する金子氏

今回は、篳篥(ひちりき)、龍笛(りゅうてき)、笙(しょう)の三つの管楽器による演奏。
僕は邦楽に造詣が深くありませんので、以下は金子さんの受け売り。
篳篥(ひちりき)は世界で最も人の声に近い楽器といわれ、地の声(音)を示します。笙(しょう)は天の声を指し、これを繋ぐ龍(水)の声(音)である龍笛が雅楽の三管と云われる。

うーん。
かっこいいです。
本日どういうチェックを行ったかというと、音の大きさ。当然2日も3日も、展覧会を開催しています。2階ロビーは吹き抜けになっていて、2階展示室だけでなく、3階展示室へも音が響く可能性がある。また、映画も上映しますから、こちらへの影響も考えなくてはならない。
お正月に雅楽の演奏なのだから、おめでたいわけです。だからといって、「縁起物ですから、許されるかな」的なことでは、事業は立ちゆきません。
考えられる可能性をとにかくチェック。チェック。チェック。それでも迂闊なことがないわけではないけれど、できるだけ多くの眼で(この場合は耳で)チェックする。
今日は、出演される金子さんはもちろんのこと、広報のスタッフが大活躍。演奏中に展示室や階段、ホールへと走り回り、音がどのように響くのか、どこまで届くのかをチェックして回っていました。


あらためて「美術館は学芸員だけではどうにもならないものだなぁ」と実感させられたクリスマスでした。

ところで、演奏している金子さん、当館の専門調査員。というか、学芸の大々先輩。お正月は篳篥で参加。多彩なのは素敵ですが、ここまで行くとちょっと「ずるい」気がしてしまうのは、僕だけでしょうか。

さて、恒例の美味しいもの情報。
再び、恵比寿のお話。僕が日頃もっとも多く昼食をとっているお店です。ここは当館のお隣、オフィスタワーに3Fにあるところで、ガーデンプレイス(YGP)内の社員食堂のようなお店。もちろん、一見さんも入れます(ただし、このような性格のため、小児は入ることができません。ただ、おなじお店がカフェを経営していて、こちらはお子様OK)。プリペードガード清算ですが、お食事の後はカードを返金可能です。

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ミートソース 460円

ボリュームが多く、YGPでもっともコスト・パフォーマンスが高いお店ではないでしょうか。昼時はYGPに入っているさまざまな会社の方が、ここに来てごった返します。リーズナブルなのもあるけれど、集まってくる感じが結構好きでつい足を運んでしまいます。
当館においでの際は、ぜひ一度。
ただし、新年は1月4日から営業です。雅楽の後は、カフェで甘酒をどうぞ。
ちなみに1月4日は、《スティル・アライヴ》展のギャラリー・トークの日。こちらにも是非ふるってご参加ください。

さぁて、年が明ければ調査本番。
平成20年は、がっつり古写るぞ!

2007年12月21日

「人々が写真と出会った時代」展

再び不定期更新にカムバックの古写真ブログ。
担当の三井です。
ご無沙汰しております。
ただいま、12/22から始まる「スティル/アライヴ」会場設営の真っ最中です。かなり面白い展覧会に仕上がっていますので、古写真展ではありませんが、一見の価値ありです。
お楽しみに。

さて、古写真の展覧会。
今日は当館で開催しているものではありませんが、ひとつ絶対にオススメの展覧会が開催されているのでご紹介します。
「横浜市所蔵カメラ・写真コレクション2007 人々が写真と出会った時代」展というもので、開催されているのは横浜市民ギャラリーあざみ野です(http://www.yaf.or.jp/azamino/)。また、こちらで関連事業として開催された「写真古典技法制作公開 ダゲレオタイプ制作」にも参加してまいりましたので、こちらのご報告も少々。

まずは、展覧会から。
とにかくダゲレオタイプ、ティンタイプといった19世紀のアメリカを中心とした写真が物量で迫ります。
まず、この展覧会の母胎である「横浜市所蔵カメラ・写真コレクション」というのがすごいのです。
「横浜は、日本における写真発祥の地の一つとして、近代日本の写真映像文化の歴史に大きく貢献したと言われています。横浜市では、こうした歴史を踏まえ、映像文化都市づくりを進めるため、アメリカのサーマン・F・ネイラー氏が40年にわたって世界各地から収集したカメラ約2,700件、写真関連アクセサリー 約2,000点、写真 約2,900件、資料及び文献 約2,000件のコレクションを平成5・6年度に取得しました。このコレクションは、世界のカメラと写真の歴史が総合的にたどれるものとして高く評価されています。本展では、その中から、ヨーロッパ、アメリカの19世紀の写真を中心に展示いたします。」(横浜市民ギャラリーあざみ野のホームページより抜粋)
約1万点のコレクションです。
中でも今回は、先にも述べたように、19世紀のアメリカン・ダゲレオタイプ/ティンタイプが目白押しで出品されています。日本の初期写真がアンブロタイプを中心としていることに特徴があるのとは違い、アメリカのそれは、金属板写真です。
これを実感するには、数点の傑作を観たのではわからない。実際に溢れんばかりの数がなくてはいけません。この展覧会にはそれがあります。
すごいです。
もちろん、傑作も出ているのですが、それよりもなによりも「数で押す感じ」これが気持ちいいんです(すみません、ちょっと興奮気味です)。
是非ご覧ください。
ただ、惜しむべきは展覧会会期。短い!何しろ、12月12日から始まったばかりなのに、12月23日(日・振)には終了してしまいます。12日間。今日から残すところ、あと三日!
短すぎますって。

などと云ってはいけません、それぞれご事情もおありのことでしょう。
もとより、あと三日になって、ご報告しているボクの粗忽さもありますが、そちらにもついでに目を瞑って戴きましょう。

ならば。
ならば、皆様ここはこちらの都合をがっつり繰り合わせて伺うしかありません。
このブログにご興味を持ってご覧くださっている方には、決して損はない展覧会です。その上、なんと無料です。太っ腹です横浜市。
ぜひ19’sアメリカン・フォトグラフィのパワーをご堪能ください。

さて、「写真古典技法制作公開 ダゲレオタイプ制作」は、去る12/16の10:00から開催されました。写真家・新井卓氏による制作公開。「新井卓は、写真史上最初期の技法、ダゲレオタイプ(銀板写真)を用い、現代の視点を通して制作を行っている写真家」(横浜美術館のアーティストインミュージアムhttp://www.yaf.or.jp/yma/exhibition/2006/artgallery/01_AIM/より抜粋)

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スピグラ(4x5カメラ)でダゲレオタイプ撮影の準備をする新井氏

ダゲレオタイプというと気化した水銀を使用する必要があるため、僕自身もワークショップにできたらいいなぁと思いながら、二の足を踏んでいました。(水銀は有毒なため、手が出しにくいのです。)しかし、今回の新井氏の方法は水銀を使わない!これはすごいです。1840年に発表されたダゲレオタイプの増感法を応用したもので、最終的に金調色を行うことによって、しっかりと色を出します。方式そのものも、とても興味深いですが、実際に自分がダゲレオタイプに映るという体験も、かなり盛り上がるものでした。
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定着中のダゲレオタイプ

さて、恒例の美味しいもの情報。
16日は、あざみ野駅ロータリー向かいのビルにあるパスタ屋さんで昼食を戴きました。

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「きのこクリームパスタ」

美味しかった。
お店に入ってしまうとグラッパが置いてあったりしてオシャレなのですが、ビルそのものの佇まいが、鄙びているというか渋味があったので正直、期待していなかった。
期待を飛び越えるおいしさというのは、嬉しいものです。

2007年11月29日

パノラマ写真

なんと、翌々日に更新するという快挙、躍進中の古写真ブログです。
さて、予告どおり、ちょっとまじめな古写真のお話をと思っていましたが、スティル|アライヴ展にも関わって、パノラマ写真のお話をしようと思います。
みなさまは、パノラマ写真というと、どのような写真を思い浮かべるでしょうか。そもそもパノラマとは全景あるいは展望を指す言葉(三省堂「大辞林 第二版」より)で、panoすべて+honorama眺めというラテン語を合成して作った造語です。手元にある1898年発行の“Encyclopaedic dictionary of Photography”には、一点からぐるっとまわして撮影する方法や、乾板のパノラマカメラの図などが掲載されています。ちなみに、これによるとパノラマカメラは1848年にフランスで作られたそうです(当然、このときの写真の技法はダゲレオタイプ!)。
つまり、写真発明初期からワイド・ヴューを求める欲求があり、これに導かれた写真たちがパノラマ写真だと、ザックリ言えばそうなるように思います。
ただ、なんというか、パノラマ写真というのはとても不思議なもののように思えてならないのです。
とくに、古写真で考えると特に不思議感が高まる。
最近、特に「古写真における撮影者と被写体と鑑賞者の関係」というのが気になっているのですが、少なくとも19世紀の日本で考えると、写真は基本的に「被写体」を見るものであって、「写真そのもの」を見るというのは極めて特殊だったように思うのです。そうやって、ちょっとカテゴリー分けをすると、「人物」「風俗」「景観」というのが被写体の三要素になるように思う。
人物写真は、肖像や集合写真を指します。
風俗写真は、その大半に人物か景観が併置しているものだけれど、制作意図としては人や場所よりも、もう少し抽象的な「風俗」というものを見せようとしているし、受け取る側も、誰が写っているのか?何処なのか?よりも、どんな服装か?何をしているか?どんな場所なのか?の方に視線が行く。
景観写真は、景色や情景を捉えたもので場所がどこか?が重要になる。
でも、どうもそれだけではないように思うものがあります。それが、下の写真。
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内田九一《長崎パノラマ》明治4年
確かに、長崎の港やそこに浮かぶ船(お召艦「龍驤」)や製鉄所などが写っていて、この写真が持つ天皇の西国巡幸を記録するという性格は十分に満たすもの。でも、それにも増して、手前に和服の人物を配し、大きく松の木を中央にすえた構図(コンポジション)に眼が行かないでしょうか。
構図。
これは被写体ではないですよね。あくまで写真という創作物が持つ要素であって、構図を見るということは、写真そのものを見るということに他ならないと思うのです。景観写真の一部である「風景写真」は、「古写真=被写体を見るもの」という構図を覆すように思えてならなくなってきたのです。

しかし。
しかし、風景写真においてパノラマはというのはさらに複雑な構造になっているようにも思えます。
ここで、現代の作品を見てみましょう。

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屋代敏博《回転回Live! 東北芸術工科大学》2007年

やはりこの写真も、やや中央をはずしたとんがり屋根の校舎から導かれる三角の構図が目立ちます。でも、画面中央右側を見ると、分かりにくいけれど、少し高い位置に赤い人物の存在が見えます。実はこの人物、屋代氏本人なのです。ちょっと高いところにおいて、特撮ヒーローぽい感じというか。
つまり、制作者自身が、全体を構図的に鑑賞するだけでなく、詳細に見据えることを前提にしていると思います。
つまり、下のような図式なのかなと考えました。
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19世紀の写真において、景観を捉えた写真という枠組みを考えると、その中に風景写真という、構図を重視した被写体を見るだけではない写真の存在がある。
でも、これらに内在する写真の中で「パノラマ」という形式を使って制作を行った写真の場合、「被写体を見る」ということも「構図を見る」こともどちらもイーブンに可能な写真になる。

「古写真を構造的に概観できないだろうか?」
なんて蛮勇なことを考えていたら、こんなところにたどり着いた。・・・そんな感じです。

ちょっと、知恵熱が出てきそうな感じなので、今日はこのあたりで。


恒例の美味しいもの情報。
今日はふたたび恵比寿。当写真美術館は、恵比寿ガーデンプレイスの中にあります。勢い、僕たち職員はガーデンプレイスの中で昼食をとることが多いのです。(コンビニのお弁当で済ましてしまうことも少なくないのですが・・・)そこで今回は、地下の焼鳥屋さんの「むぎとろ定食」。
でも、智恵熱のせいか、写真がぶれてしまいアップできませんでした。
どうかご容赦を。
とってもボリュームもあり、美味しいです。こちらは「高菜わっぱ飯」や、もちろん「焼き鳥定食」、そして、いまの季節は「かきフライ定食」などもあって、バラエティも豊富でおすすめです。

2007年11月27日

番外編:新進作家展スティル|アライヴ ~ビール工場取材~

このところ、比較的いいペースで更新しています古写真ブログ。
さて、今回は番外編としてサッポロビール工場の取材をお届けします。
新進作家展第6回目となる本展は、「現代人の生と時間、その表現」をテーマに、写真・映像をメディアとして制作活動を行う30代のアーティスト4人に焦点をあてたグループ展(http://www.syabi.com/details/sakka_vol6.html)です。

もちろん、この展覧会は僕の企画ではありません。
しかし、展覧会の制作運営をひとりで切り盛りするのは難しいため、当館では常に主担当と副担当1名という2人体制でお仕事を運んでいます。つまり、この展覧会は僕が副担当というわけです。僕が主担当で企画する展覧会は、基本的に幕末~明治期に制作された写真で構成することがほとんどです。なので残念ながら、出品作品を制作してくださった人々にお会いすることは出来ません。古写真は大好きなのですが、ここだけは悲しい。残念でならない部分なのです。

ですが、今回はバリバリの現代作家。
それも僕とほとんど同年代の人々が制作する作品が出品される。
まして、実際に作家が取材しているところに立ち会うことが出来る!というのは、学芸員冥利に尽きます。
かなり、うれしい。この展覧会を企画した石田哲朗学芸員ありがとう。
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パパ一年目のイケメン学芸員、石田氏。

というわけで、スティル|アライヴ出品作家の田中功起さんの制作に立ち会わせて戴きました。
なお、この制作にはサッポロビールさんの多大なるご協力をいただきました。
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工場内に入るために制服をお借りしました。(写真中央が田中功起氏)

それにしても、ビール工場はかっこいい場所でした。
「来てるね、未来!」的というか、「ピタゴラスィッチ」的というか、轟音の中で恍惚としてしまう感じでした。
なにしろ、基本すべてがオートメーション。
その行程はというと・・・戻ってきたビールケースがレーンに入ると、まず大きなアームが一段ずつ降ろし、ビンとケースを分け、それぞれを洗浄。洗浄されたビンにビールを詰め、速攻で王冠がはめられます(この部分は完全にクローズ構造)。そして、規格に合っているか、異物の混入はないかなど、さまざまなチェックがもの凄い数のセンサー&人の眼によってなされて、適合したものだけにラヴェルが貼られる。そして、きれいになったビールケースと合流して、また積み上げられ、オートマチックで倉庫へ。
このすべての工程が、大体1時間半くらいで1サイクル終了です。
ビール瓶やビールケースはすべてリユース。
傷がついてしまったビンはそのままリサイクルされます。
ところで、みなさまご存知でしたでしょうか?
ビールケース(「P函(ピーバコ)」と業界の方はおっしゃるそうです)は、大体25年くらい使えるのだそうです。そして、その役目を終えると溶かされてパレット(ビールケースを積んで載せておく台)になるそうです。
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洗浄されているビールケース

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膨大に積み上げられたビールケースを撮影する田中氏

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流れる大ビンたちを撮影する田中氏(手ぶれしていてスミマセン)

田中さんによる今回の出品作品は、社会の中で流れるあるいは、循環するものたちを展示空間で一時停止させるもの。12月22日からの展覧会では、今回撮影した映像に、住宅廃材を利用して制作されたものを加えて、インスタレーションとして発表される予定。
ご期待ください!

今回の撮影取材は、古写真を「いま」プレゼンテーションすることを考えている僕にとって、とても意味のある時間を過ごさせていただきました。

さて、恒例のおいしいもの。
今回はもちろん、サッポロビール工場のお食事。社員食堂の定食です。
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白身魚の天ぷら定食。
実をいいますと、恵比寿の当館となりガーデンプレイスタワーにもトレーを使ってセルフサービスの社員食堂のようなお店があって、比較的よく利用しています。でも、こちらは本物。お箸は割り箸でなく、ちゃんとリユースするものだし、器も一切気取りなし。潔くてかっこいい。
一般のビール工場見学では、訪れることが出来る場所ではないので、かなり役得感がありました。

次回は、ちょっとまじめな古写真のお話を。

2007年11月21日

古写真研究国際コンファレンス@長崎大学

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いきなり、僕の撮った稚拙な写真からですみません。鍋冠山頂上(長崎のグラバー園の上を登っていくと現れる展望台)からのパノラマ写真で、カメラの向きを変えながら撮影した写真を繋いだものです。

先日お伝えしたとおり、長崎へ行ってきました。
古写真の上ではF.ベアトや上野彦馬の写真などで、とてもおなじみの場所なのですが、訪れるのはほとんど初めてでした。時として、幕末や明治の風景を日ごろ見ている場所に、現在訪れるとがっかりする事もあるのも事実です。でも、長崎は違う。もちろん、古写真の中の長崎に比べて、高層建築を含んだ建物の数が飛躍的に増えていたり、街の対岸に位置する造船所には巨大なタンカーが停泊していたりと、状況は大きく異なります。でも、アップダウンの多い複雑な地形と海を抱いた街の構造は、東京で生まれ育った僕には本当に新鮮でした。お気に入りの場所になりそうです。
さて、11月16日~17日の二日間、内外の研究者を迎えて古写真に関する研究発表(古写真研究国際コンファレンス)とそれを総括する形で国際シンポジウムが行われました。そして、僕もその末席を汚させていただいたという次第。
招聘されていたのは、日本写真協会国際賞を今年受賞されたテリー・ベネット氏(英・古写真研究家)をはじめ、ヘルマン・ムースハルト氏(蘭・古写真研究家)、セバスチャン・ドブソン氏(英・古写真研究家)、ルーク・ガートラン氏(英・セントアンドリュース大学)、ブライアン・バークガフニ氏(長崎総合科学大学)、小佐野重利氏(東京大学)、高橋則英氏(日本大学)、三原文氏(大阪大谷大学)、齊藤多喜夫氏(横浜都市発展記念館)、倉持基氏(東京大学)そして、当館の金子隆一氏と僕。長崎大学からは全体のオーガナイズをされている姫野順一氏と若木太一氏が発表をされました。(敬称は氏に統一させていただきました)
日頃、尊敬している人々に囲まれて、自分の発表で緊張するやら冷や汗をかくやら、ほかの方のしっかりした調査に裏付けされた緻密な発表に感銘を受けるやらで、てんやわんやの16日でした。
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僕の内容としては、当館所蔵の《長崎パノラマ》という写真についてのもので、この作品の制作時期をある程度特定した上で、内田九一のパノラマ写真と比較しました。ともに長崎を撮影したパノラマですが、一方は測量の延長線上に位置するもの(この写真見る人の興味は長崎という場所に向く)であり、一方はそれ(パノラマ写真自体)を眺めて楽しむもの。明治初期までに制作された同じ土地を撮影して制作されたものでありながら、性格が大きく異なる。前者のパノラマが存在することを証明する方法として、1860年に長崎の英領事であったジョージ・モリソンが英総領事オールコックに向けて送った手紙を例として挙げ....

って、いくら古写真ブログとは言え、このお話をガッツリはじめるというのもなんですし、今回の研究発表内容については長崎大学からまとめたものを出版する予定ですので、興味のある方はもう少しおまちください。また、パノラマについての考察は、次回の当館研究紀要に執筆いたしますので、さらにガッツリ僕の考察をお知りになりたい奇特な方は、こちらをお待ち下さいますようお願いします。鋭意執筆中です。(現在、当館HPで研究紀要No.6を公開中!)
さて、17日の午前まで研究発表が行われ、午後からは会場を中部(なかべ)講堂に移して国際シンポジウム。
「古写真にみる世界史の中の長崎」と題されて、実に盛り沢山な内容。なんと上野彦馬、内田九一、富重利平という写真創成期を代表する三名の写真師の御子孫がご対面。それぞれショートスピーチの後、握手撮影をする場面も!テレビカメラが入っていましたし、フラッシュの嵐でした。(タイミングを逸して撮影できず。どうかご容赦下さい)そして、テリー・ベネット氏、セバスチャン・ドブソン氏による基調講演の後、パネルディスカッション、図書館長による「古写真研究長崎宣言」がなされて閉幕。
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こちらはパネルディスカッションでの一コマ。

それにしても、本当に有意義な時間でした。同じ古写真から色々な考え方が引き出せたり、アプローチの違いによって様々な結論が導き出せたりと、考えること仕切でした。そして、現場を見るというのも本当に大切だという事も実感。まだまだ解らないことや努力不足な部分が多いことも自覚しましたが、その分がんばれることも多いかなと。
お呼び下さった長崎大学に、本当に感謝です。

さて、恒例の美味しいもの。
もちろん今回は長崎の情報です。
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こちらは皆様ご存じトルコライス。長崎大学のすぐお向かいにあるお店でいただきました。ナポリタンとピラフ、とんかつ(デミグラスソース)、そしてサラダの組合せ。かなりなガテン料理です。おいしかった。16日の昼食にいただいたので、パワー全開で発表に望めました。

そして、今日はスペシャルでもう一つ。
長崎と言えば、ちゃんぽんでしょう!
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ちょっと甘めのとんこつスープに白菜、もやし、ニラ、豚肉、かまぼこなどの具がてんこ盛り。
料理が出た途端、卓にいた全員が無言になって黙々と食べてしまうくらい、ものすごく美味しかった。
連れて行って下さった現地の方いわく、「ここのお店がベンチマークですよ」とのこと。ということはこれよりも美味しいお店もあるという・・・。興味は尽きません、長崎。

2007年11月14日

横浜で講演

ご無沙汰しております。不定期更新、古写真ブログ担当の三井です。
さて、今月と来月は様々な講演やシンポジウムに御招待をいただいております。こんな若輩をお呼びいただいて、本当にありがたいことです。感謝感謝。その分、がんばらなくては。
というわけで、今回は11月11日(日)に横浜開港資料館の講堂で開催された講座の模様を少しだけお伝えします。この講座は4回連続のもので、担当の斉藤多喜夫氏をはじめ、石黒敬章氏などそうそうたるメンバーがそろっています(残念ながら、すでに申し込みは終わっています)。そんな中で僕がお話しさせていただいたのは、第2回。「明治の写真技術 ~ガラスと卵の話~」と題して、写真の技術史的な側面のお話をしました。
写真はそのヒトコマ。
yokohama.jpg
後ろにプロジェクションしている写真、実は僕の曾祖父の写真なんです。残念ながら、撮影者はわかっていませんが、撮影されたのは明治27(1894)年。コロディオン湿板の技術を使って、制作されたアンブロタイプです。それにしても、なんでこんなに僕と曾祖父は似ているのだろう?DNAってすごいなぁとこの写真を見るたびに感じます。同時に、物理的に会うことは叶いようのない、曾祖父の顔や指先を知ることができる写真の力の楽しさを強く感じてしまうのです。

さてさて、今週の金曜日~土曜日は長崎大学で「古写真研究公開シンポジウム [古写真にみる世界史のなかの長崎]」で発表が待っています。このご報告はまた後日。
それから、来月の12月8日(土)に渋谷のたばこと塩の博物館で講演会(http://www.jti.co.jp/Culture/museum/tokubetu/eventnov07_pre/index.html)、12月22日(土)には横浜市民ギャラリーあざみ野(http://www.yaf.or.jp/azamino/index.html)で鶏卵紙のワークショップを行います。いずれも、ご参加いただけますので、お時間のある方は是非いらしてください。

実は講演の直前に横浜都市発展記念館の近くにあるお店でとてもおいしいパスタを食べたのですが、正直、写真を撮っている余裕がありませんでした。
申し訳ありません。
そんなわけで、おいしいもの情報はお休みです。
次回をお楽しみに。

2007年10月16日

うれしいお便り

こんにちは、不定期更新古写真ブログの三井です。
雑事に追われるのが学芸の常とはいえ、少し間が開きすぎました。深く陳謝いたします。
できるだけ、がんばりますね。


さてさて、とてもうれしいことがあったので、報告します。
ある日、一通の封筒が届きました。
封筒に記載されたお名前には、記憶がありません。
少し「?」を浮かべながら封を開けると下の資料が入っていました。

本を開くと、お手紙があり、とても闊達な字で、本当に丁寧な文面。古写真調査についての新聞を記事を見て、東北初の写真館に関して資料があるので参考に、という趣旨のお手紙でした。こういったご連絡は本当にうれしいんです。東北地方の写真師で菊池新学という人がいるということは知っていましたが、同封された資料について僕自身は未見のものでした。本当にご協力に感謝します。
そして、お手紙の最後にお名前と「八十歳」という文字。
感謝するとともに、本当に頭が下がりました。
自分は37の若輩者で、お手紙を頂戴した方のずいぶん後ろを歩いています。はたして、僕はここまで親切ができるだろうか。いま、正直できていないように思います。本当、精進しなくては。
感謝とともに兜の緒を締めた三井でした。

さて、恒例のというか、古写真よりこちらが楽しみという声がちらほらありますおいしいもの情報。
たまには地元の自慢もしないといけません。
それと、「三井さんて、麺類しか食べないんですね。。。」という声が上がりつつあることへの反論も含めて、ハンバーガーです。

当館のすぐ近くにあるお店です。
アボガドバーガー!
うまい。
かなりメタボですが、うまいです。
奥にあるジンジャー・エール(?)とよくあいます。
和食も麺類も大好きですが、案外こんなところに明日への活力があったりします。